nRF52820のカギとなる機能が、フルスピード(12Mbps)USBでの動作です。USBはPCやスマートフォン、ゲートウェイなど幅広いホストデバイスとの低レイテンシ・高帯域幅での通信を可能にするポピュラーな接続インターフェイスであり、このインターフェイスによりDFU(Device Firmware Updates)-over-USBも現実的なものになります。メインの電源レギュレーターに加え、nRF52820のUSBペリフェラルには、5VのVBUS信号をUSBシグナリングインターフェイスで必要な3.3Vに変換する専用レギュレーターなどが含まれており、外付けレギュレーターで必要となるコストやスペースの問題も解決することが可能です。
nRF52820には最大18本のGPIOと、アナログコンパレーターやSPI、UART、TWI、QDECといった幅広いアナログおよびデジタルインターフェイスが組み込まれています。供給電圧は1.7~5.5Vの入力範囲に対応しており、ボタン電池や充電式電池での稼働も可能です。USBホストに接続すれば、5VのVBUS信号の常時電源で直接nRF52820に電力を供給できます。構成のリファレンスレイアウトはNordicより提供されます。
nRF52820は、S112、S140 SoftDevice(Bluetooth 5.1認証済みプロトコルスタック)、およびS122(アルファバージョン)SoftDeviceに対応しています。S112とS122はメモリが最適化されたペリフェラルおよびセントラルスタックで、S140はロングレンジや2Mbpsの高スループットなどの機能を備えたセントラルおよびペリフェラル用のBluetooth 5プロトコルスタックです。
nRF52820を使用した開発にはNordicのnRF5 SDK(Software Development Kit)v16.0.0で対応しますが、フルサポートは2020年第2四半期を予定しています。nRF52820のエミュレートにはnRF52833 Development Kit(DK)が使用可能で、nRF52820をベースとする設計の開始方法として推奨します。DKは、Bluetooth LEや Bluetooth Mesh、802.15.4、Thread、Zigbee、および独自仕様の2.4GHzアプリケーションを対象とする汎用性の高いシングルボード開発キットです。Arduino Uno Rev3規格と互換性があり、この規格に準拠するNordicのPower Profiler Kitや幅広いサードパーティ製シールドを使用した開発が可能です。
Nordic のプロダクトマネジメントのディレクターであるKjetil Holstadは次のように述べています。
「nRF52820は、Bluetooth 5.2マルチプロトコルSoCにより、nRF52シリーズの定評あるハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームをさらに拡張し、コスト制約を強いられるアプリケーションの開発に役立ちます。nRF52820の登場により、ODMやOEMの皆様が様々な近距離ワイヤレス接続製品を開発する際のベースとして、nRF52シリーズが理想的なプラットフォームとなりました。シリーズの全製品に共通するハードウェアおよびソフトウェアアーキテクチャによりソフトウェアの優れたポータビリティが実現し、製品化までの時間と開発コストが削減されると同時にソフトウェアの再利用性も向上します」
nRF52820の設計サンプルは現在入手可能です。SoCのパッケージはGPIO 18本を搭載した5x5mm QFN40で、NordicのnRF52833 SoCとの間にドロップイン互換性があります。