セルラーIoTを活用したユニットでガス管異常の遠隔監視を可能に

NordicのnRF9160 SiPを採用し、Braveridgeのガス導管内露点・圧力遠隔管理システムがガス異常の原因をピンポイントで特定

超低消費電力無線ソリューションのリーディング・プロバイダーであるNordic Semiconductor(OSE:NOD、以下Nordic)は本日、福岡に拠点を置くIoTソリューション企業の株式会社Braveridge(本社:福岡県福岡市/代表取締役社長:小橋 泰成、以下Braveridge)が、同社の「ガス導管内露点・圧力遠隔管理システム」にワイヤレス接続と処理能力向上用に、LTE-M/NB-IoTモデムとGPSを搭載したNordicの低電力System-in-Package(SiP)であるnRF9160を採用したと発表しました。Braveridgeのシステムは、ガス事業社がガス管の異常の原因を特定し、メンテナンスや修繕にかかる時間とコストの削減に役立ちます。 

供給されるガス異常の発生原因は、古いパイプの構造的な不具合や道路工事、悪天候によるパイプの凍結、ひび割れによるパイプ内への水の流入など、多岐にわたります。このような異常の際には、メンテナンススタッフを送り込み、影響を受ける範囲を特定して修繕を行う必要がありますが、その場合消費者側に大きな混乱を招く可能性があります。異常の原因を特定する作業には従来、高価な機材や、メンテナンススタッフの試行錯誤による作業が必要なためです。Braveridgeの遠隔管理システムではこの作業プロセスが大幅に軽減され、従来よりも短い時間でガス異常を解決することが可能になります。 

 運用においては、ガス管網全体の適切な箇所に複数の端末を設置します。各端末には、温湿度センサーで露点(水蒸気が凝縮して水滴を形成し始める気温)を監視し、ガス管内への水の侵入や浸潤の可能性を通知します。さらに各端末でガス管の内圧と外圧を2個の圧力センサーで測定し、その差圧(ゲージ圧)から適切なガス圧の監視と記録をしています。 

また各端末にはLTE-M接続機能を持つnRF9160 SiPを搭載し、取得したデータをセルラーネットワークを介してBraveridgeのBraveGATEクラウドサービスを経由し、Webサーバーがデータを取得します。Webサーバーとアプリでガス事業社がデータを確認し、ガス異常の発生箇所を特定し、へメンテナンススタッフを送り込みます。nRF9160 SiPに搭載されているGPSより提供される正確な位置情報によりガス異常の可能性がある箇所をピンポイントで特定可能です。またLTE-Mセルラー接続に対応し、GPS位置情報の要求への迅速な応答を可能にするだけでなく、nRF9160 SiPに搭載された64-MHz Arm® Cortex®-M33プロセッサと1MBのFlashおよび256KB RAMにより、複数のセンサーから要求される複雑な独自のアルゴリズムのエッジ処理も実行し十分な計算能力も確保します。 

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nRF9160では業界トップの低消費電力を実現します。そこにNordicのテクニカルサポートが加わるとなれば、開発者にとってnRF9160が最善の選択肢となるはずです
Yasunari Kohashi, Braveridge

Braveridgeによれば、BraveGATEクラウドサービスではクラウドServerを必要としない画期的なネットワークトポロジを実現しています。 この画期的な構成の結果、クラウドServer開発が不要となり、LTE-MセルラーIoTソリューションの開発が劇的に簡略化されます。アプリ開発者はWebサーバーからREST APIインターフェイスを使って、各端末を直接Downlink制御することが可能です。BraveGATEのシステム構成では、nRF9160を実装した各端末がServer(既存のIoTでは端末がClient)となり、PCやスマートフォンがClientとしてServerである各端末に直接リクエストをDownlinkします。そして、各端末はClientから要求されたデータをUplink応答します。これにより、Clientが必要な時に、必要なデータを取得できるため、無駄な通信を低減します。この結果、各端末の消費電力を大幅に削減できます。さらに、BraveGATEでは、Client側のリクエストに応じてフレキシブルに定期Uplinkさせることも容易です。 

「ガス導管内露点・圧力遠隔センサー」の電源はCR123リチウム電池2個で、nRF9160 SiPが低消費電力であることもあり、電池寿命は約6か月以上です。nRF9160 SiPは低消費電力での運用に最適化されており、PSMおよびeDRXの省電力モードに対応しています。たとえば、12時間ごとに1kBをアップロードするPSMモードでの平均電流は5.5µA、スリープモードでの平均電流は最大で2µAです。nRF9160 SiPの対象用途としては、アセット・トラッキングやスマートシティ、スマート農業、インダストリアル、スマートメーター、ウェアラブル、医療などがあげられます。 

nRF9160 SiPはグローバルセルラーIoTアプリケーションに対する認証を取得済みで、専用のアプリケーションプロセッサとメモリ、RFフロントエンド(RFFE)を統合したマルチモードLTE-M/NB-IoTモデム、GPSおよびパワーマネージメントが、10x16x1mmのコンパクトなパッケージに組み込まれています。プロセッサと大容量のメモリ割り当て以外にも、様々なアナログ/デジタルのペリフェラル、自動化された電源およびクロック管理、Trusted Execution用のArm TrustZone®、およびアプリケーション層セキュリティ用のArm CryptoCell™ 310を備えています。プロセッサはBSDセキュアソケットAPIを介してLTEモデムと通信し、 アプリケーション層プロトコル(CoAP、MQTTもしくは 

LWM2M等)およびアプリケーションをサポートします。 

 nRF9160 SiPのLTEモデムはSIMとeSIMの両方に対応しており、700~2200MHzのLTEバンドのサポート、23dBmの出力電力、50ΩのシングルピンアンテナおよびUICCインターフェイスを提供します。LTEスタックレイヤーL1-L3、IPv4/IPv6、TCP/UDPおよびTLS/DTLSはモデムファームウェアの一部です。関連製品には、事前認証済みのシングルボード開発キットであるnRF9160 DKと、アプリケーション層プロトコルとアプリケーションサンプルを含むソフトウェア開発キットnRF Connect SDK、事前認証済みおよび事前コンパイル済みダウンロードとして提供されるLTEモデムファームウェアなどがあります。 

Braveridgeの代表取締役社長である小橋 泰成氏は次のように述べています。 

「NordicのnRF9160の最も画期的な点はSiPにアプリケーションプロセッサを統合したことで、(外部プロセッサの対応に必要な)UARTインターフェイスが不要になったことです。これは他のセルラーIoTソリューションにはない特徴です。開発期間が年単位に長期化する最大の原因は、これまでモデム型のRFモジュールしか選択肢が無く、、外部マイコンでUART制御しているからです。このnRF9160のお陰で、多発するUART起源のバグから解放され、開発の大幅な効率化を実現できました。 

パワフルな内蔵プロセッサに加え、nRF9160では業界トップの低消費電力を実現します。そこにNordicのテクニカルサポートが加わるとなれば、開発者にとってnRF9160が最善の選択肢となるはずです。」 

このシステムはBraveridgeと日本の都市ガス事業者の連合の共同開発によるものです。この連合は、福岡に拠点を置く西部ガスを幹事会社とする全国の都市ガス事業者11社で構成されています。